ナクル湖(ケニア)
ナクル湖はフラミンゴの集まる場所として有名ですが、多くの課題や試練に直面しています。ILECは3年間のAFSAN事業において、これらの課題に取り組むためにこの地域の関係機関と連携し、ILBMプラットフォームプロセスの導入を進めました。AFSANプロジェクトの活動を通じ、2011年にはナクル湖のILBMプラットフォームプロセスが正式にスタートしました。2012年には現地ILBM運営委員会が発足し、委員会はILECが出版した「湖沼概要書作成ガイドライン」を用いて「ナクル湖湖沼概要書」の簡易版を作成しました。また、3回にわたり開催した利害関係者会合では、ナクル湖流域におけるILBMガバナンスの6本柱の現状について分析をしました。
現在では、ILBMプラットフォームプロセスを通じて行政、NGO、CBO(Community-Based Organizations)など11の重要な流域機関が流域ガバナンス改善に向け協働しています。参加メンバーは2年に1回の報告会を開くことを決め、短期と長期の行動計画を提案しています。彼らは今後、1)湖の沈泥や河川の土砂堆積、2)環境関連法律の不十分な執行、3)不十分な廃棄物処理や市街地の汚染、4)下水の詰りや漏れ、未処理工場廃液の垂れ流し、5)低収入地域の衛生問題などに取り組む予定です。
ビクトリア湖ニャンザ湾(ケニア)
ニャンザ湾は、ビクトリア湖における最も汚染された地域となっています。当地ではILBMプラットフォームプロセスに取り組む活動がこの地域の中核となるNGO、OSIENALAによって進められています。OSIENALAの呼びかけに応じて、ニャンザ湾周辺の主要な利害関係者(学校や大学、KEFRI、KEMFRI、KARI、KFSなどの準政府機関、地方自治体、湖沼流域開発局(LBDA)、ビクトリア湖環境管理プログラム(LVEMP)、ビクトリア湖流域協議会(LVBCA)、会(LVBCA)、関連する省庁や消費者保護団体など)がILBMチームを立ち上げました。このILBMチームは現在、ニャンザ湾の湖沼概要書を作成中であり、以下のような活動に取り組んでいます。
1)地域保全活動プロジェクト
OSIENALAが中心になり、ビクトリア湖の南岸域で湖に流入する汚染負荷を低減するための住民参加による保全プロジェクトが進められています。プロジェクトでは、植樹、河川の堤の保全、土壌流出を防ぐための農民の教育などに取り組んでいます。
2)統合的農業の推進
OSIENALAはOceantec社(米国)と協力して漁業資源の保護とホーマベイ地域の生計の改善を目的とするプロジェクトを進めており、園芸、魚の養殖、酪農、安全な水の提供などに取り組んでいます。
3)ビクトリア湖流域のHopeプロジェクト
ビクトリア湖流域のHopeプロジェクトは、ビクトリア湖の流域住民の健康と健全な環境を目指すもので、多岐にわたる彼らの暮らしと環境の保全を支援する活動を実施しています。
チベロ湖(ジンバブエ)
チベロ湖はハラレ市およびチトゥンギ市の飲料水の水源となっていますが、富栄養化が極度に進み、その水には高濃度の窒素、リン、懸濁・溶存粒子が含まれています。さらに深刻なのは、土砂堆積によって湖の貯水能力が減少し続けていることです。ILECと地元の利害関係者による過去5年間の活動から、チベロ湖の水質改善のために必要な対策が明らかになってきました。
2011年9月には、共同で現地調査を実施し、同年12月にはILBMプラットフォームが立ち上がりました。2012年3月にはジンバブエ大学の仲介により暫定委員会が設立され、チベロ湖のガバナンスを改善していくための構想がまとめられました。2012年7月には、インドのShrishti生態学研究所の専門家とジンバブエのILBMチームが、グリーン・ブリッジと呼ばれる環境に配慮した現地設置式の水平濾過システムを実験的にマニャメ川に設置しました。ILBMプラットフォームプロセスがこの地域に定着するには時間がかかるでしょうが、ILECは今後もさまざまな方面から現地の利害関係者が自らそのプロセスに参加し貢献できるよう、支援していきたいと考えています。
アフリカにおける統合的湖沼流域管理(ILBM)国際シンポジウム(2013年6月1日)
第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に合わせ、ILECはTICAD Vパートナーシップ事業として「アフリカにおける統合的湖沼流域管理(ILBM)国際シンポジウム-健全な湖沼管理を通じたTICADプロセスの推進-」を6月1日、横浜市で開催しました。なお、このシンポジウムの開催にあたっては、地球環境基金の助成を得ています。
基調講演では、1993年ストックホルム水大賞受賞者であるインドのマダヴ・チターレ博士が、アフリカに先行するインドの取り組みを紹介しました。その後行われたパネルディスカッションでは、ケニアのビクトリア湖ニャンザ湾、ナクル湖、ジンバブエのチベロ湖の事例がそれぞれ現地で活動するNGO代表者や研究者から紹介されました。国連環境計画(UNEP)の担当者も参加し、各湖沼が抱える課題は何か、持続可能な湖沼管理を図る上で何が必要なのかなど、活発な議論が交わされました。
アフリカにおける水環境改善事業(AFSAN事業)(2009-2011年度)
ILECは滋賀大学環境総合研究センターと協力し、アフリカにおける水環境改善事業(AFSAN事業)を環境省から受託し、実施しました。このプロジェクトを進める中で、ビクトリア湖、ナクル湖、チベロ湖がILBMプラットフォームプロセスの初期段階を完了することができました。